永遠の議論:十割蕎麦と二八そば、あなたはどっち?
阪神か巨人。バルセロナかレアルマドリード。熱心なファンがいるところに熱い議論が巻き起こります。
“蕎麦界”も同じです。蕎麦本来の味と香りが感じられる本家、十割そば。安くて小麦粉のもちもち感が強みの挑戦者、二八そば。それぞれの陣営のファンが度々繰り返す熱い論争を、蕎麦屋のおじいさんが語ります。
十割蕎麦の魅力と難しさ
十割蕎麦は、その名の通り「そば粉100%」で打たれた蕎麦です。つなぎの小麦粉を使わないため、蕎麦本来の香りと風味を存分に味わえるのが最大の魅力。口に含んだときに広がる豊かな香ばしさは、まさに蕎麦好きにはたまらない体験です。
しかしその一方で、打つのが非常に難しく切れやすいため、職人の技術が問われます。喉ごしよりも「香りと噛む楽しみ」が中心なので、初めて食べる人には少し“野性味”が強く感じられるかもしれません。保存性も低いため、提供できる店が限られるのも特徴です。
二八そばの歴史と親しみやすさ
二八そばは「そば粉8割+小麦粉2割」で作られた蕎麦で、江戸時代中期から広く普及しました。「二八」という名前は、配合の比率を示す説と、当時の価格(16文=二八)を示す説の2つがあります。
小麦粉を混ぜることでコシが出て打ちやすく、喉ごしがよいのが二八そばの魅力。日本全国で食べられるスタンダードな蕎麦で、多くの人にとって“蕎麦といえばこれ”という存在です。
ただし、十割に比べると蕎麦の香りはやや控えめ。小麦粉の割合が増えるほど、蕎麦らしさが薄れてしまう弱点もあります。
どちらを選ぶ?食べ比べのすすめ
では、十割と二八、どちらを選べばよいのでしょうか。
蕎麦の香りをしっかり楽しみたい人 → 十割蕎麦
喉ごしのよさや安定感を重視する人 → 二八そば
観光地によっても違いがあります。信州や山形などでは十割を看板にする店が多く、江戸前の蕎麦屋では二八が主流です。その土地ならではの蕎麦を味わうのも旅の楽しみのひとつですね。
結論:結局は好みだ
結局は 「香りを楽しみたいか、喉ごしを楽しみたいか」 という 好みの違いに落ち着きます。
ただし、面白いのはその日の気分や食べる場所によっても感じ方が変わるところです。
山奥の水のきれいな地域で食べる十割 → 素朴で風味豊かに感じる
都会の老舗で食べる二八 → のど越しの良さと完成度に感動する
まるでワインやコーヒーのように、シーンによって印象が変わるのも蕎麦の奥深さですね。

